SuSE Linuxを使ってみる


新型ワークステーション導入

今度,研究室で新たなワークステーションを導入することになった. 最初はAlphaマシンを導入する予定であったが,コストパフォーマンスや今後のサポート, 保守のし易さ等を考慮して2GHzのPentium 4を搭載したマシンにすることにした. ワークステーションとは言っても中身は普通のPCと変わらない. メーカーサイトの情報によると, チップセットはIntel850でマザーはAsusのP4T. HDDはATA100の30GB,メモリはRIMMを1GB搭載している. ビデオカードはXでの使用を考慮して「できるだけ標準的なもの」ということだ. Riva TNT系かG400あたりか. これで価格が35万だからちと高い気もするが,ユーザー設定やアフターサポート込の 値段だろう.

気になる速度だが,ベンチ結果によると, Gaussian98というベンチマークプログラムの結果はAlpha21264/833MHzを上回っており, 「9GFLOPSの現役スパコンであるVPP5000に肉薄する性能」となっている. このベンチマークプログラムがどのようなものか良く知らないが,相当速いことだけは確かなようだ.

OSはSuSE Linuxがプリインストールされている. SuSEというのはドイツのディストリビュータで, 日本では知名度が低いが世界的に見ればRedHatに次ぐディストリビューションらしい(メーカーサイトより). メーカーがこのOSを選択した理由は, 「各OSの開発指向を検討すると、現時点ではSuSEがXXXに最適だと考えたから」ということらしく, 「SuSEの多少先進的なカーネルを採用する指向は最新デバイス採用が容易で性能に貢献する」 いうことだ(原文のまま."XXX"はこのワークステーションの型番). 何だかよくわからないが, 確かにプリインストールされているSuSE Linux 7.1のカーネルは2.4.4-9であり, RedHat 7.1と比べると若干新しい.

ただ,当研究室では主に計算専用のサーバーとして利用する 予定なので,先進機能よりも安定性を重視したいところだ. その意味では枯れたカーネルの方が安心できるのだが, メーカー側ではSuSE Linuxプリインストールモデルしか用意されていないので仕方がない.

電源を入れるとすぐ使える状態で出荷されるとは言っても, その後の管理は私の仕事だし,マシンが届く前にSuSEとは如何なるものかをある程度把握しておきたい. これまで主にRedHat系のディストリビューションを使ってきたが, SuSEもパッケージ管理にRPMを採用しているということなので, ソフトウエアの保守管理は何とかなるだろう. とりあえずSuSEのサイトからダウンロードできる非商用版をインストールして使ってみることにした.


SuSEのインストール

名誉ある(?)人柱に選ばれたのはCyrixIII 533MHzを 載せたfukunm1である. このマシンの詳細は

CyrixIIIを使ってみる

に書いた. CPUの温度が室温+αまでしか上がらない実に省電力なマシンである. 現在は研究室のスキャニング専用マシンとして使われているが, スレーブに繋いだ4.3GBのHDDが遊んでいるので,これにSuSEを入れWinMeとのデュアルブートにする. このHDDは

外付けHDDからIDE HDDが...

で書いた富士通のMPC3043ATというドライブである.

SuSEのダウンロードサイトは世界各国にある. 一応日本語対応のバージョンもあり,そのCD-ROMイメージを置いてあるサイトもあるが,まともにダウンロードすると CD-ROM7枚にもなり,焼くだけで大変である. 評価用にインストールするだけなので日本語が通る必要はないし, CD-Rに焼くのもめんどくさいので,英語版をネットワークインストールした. わざわざネットワーク経由でインストールしたのは,英語版のCD-ROMイメージファイルが 世界中の何処にも見つからなかったからである(後からわかったことだが,SuSE Linuxの英語版のCD-ROMイメージは 用意されていないらしい).

まず日本のミラーサイトに行って 起動ディスクのイメージとNICのドライバを取ってくる. 両者とも/Linux/packages/SuSE/suse/i386/7.1/disks/の下にあり, ファイル名はi386およびmodules2である. それとディスク書き込みツールのrawrite.exeも取って来る. これは/Linux/packages/SuSE/suse/i386/7.1/dosutils/rawrite/にある. rawriteを使って起動ディスクとドライバディスクを作る.

起動ディスクで起動し,初期画面で "Load Kernel modules" を選ぶ(思い出しながらこれを書いているので, 実際にはメッセージが異なるかもしれない). ドライバディスクを要求されるので,ディスクを入れ換える. ディスクに収録されているドライバの一覧が表示されるので,適切なドライバを選ぶ. このマシンのNICはPlanex FNW-9700Tで, チップはVIAのVT86C100A(Rhine)である. ドライバをロードする際のパラメータには何も入力しなかったが, 正常にドライバがロードできた.

初期画面に戻り,今度は "Start Installation" を選ぶ. インストールの方法を聞かれるので "Network(FTP)" を選ぶ. TCP/IP関連の設定画面に進み,"自動設定するか否か" を尋ねられるので,必ず "No" を選択して IPアドレス,Gateway,ネームサーバを手動設定する. DHCPが利用できる環境なら "Yes" を選択すべきだろう. 次に,サーバーのIPアドレスを聞かれるので,ミラーサーバーのIPアドレスを 入力する. サーバーとの通信に成功すると,インストールイメージの存在するディレクトリの入力画面になる. 先のサーバーの場合 "/Linux/packages/SuSE/suse/i386/7.1" を入力する. ディレクトリはサーバーによって異なる.

以上の設定が正常に終了すると,サーバーからインストールに必要な ファイルがダウンロードされ,RAMディスクに展開される. その後,パーティションの設定やインストールモデルの選択画面に移る. 今回はスワップに150MB,あとはすべて/(ルート)に割り当てた. インストールモデルはKDE2 Workstationを選択した. 初めてのディストリビューションなのでインストールモデルを指定するおまかせインストールにしたが, 本来ならばカスタムインストールを選択し,余計なデーモンやアプリケーションは インストールしない方がいいだろう.

サーバーからダウンロードするパッケージは約500で,全部で1.3GB程度であった. 日本のミラーサイトは割と回線が太いようで,休日に作業したこともあって約1時間程度でダウンロードが終了した. その後,sendmailやinetdなどの細かな設定画面が現われたが内容はよく覚えていない. 適当に答えてインストール完了.

インストールが終了するとコンソールログインの画面になった. そういえばXの設定をまだやっていない. rootでログインしてXF86Setupを立ち上げ,マウス,キーボード,ビデオカードおよびディスプレイを設定した. その後,startxでKDE2が立ち上がった. 解像度は1024*768に設定した. ビデオがMilIIなのでなかなか発色もよい.


SuSEのアップデート

KDE2は噂に違わずかなり洗練されたウィンドウマネージャで,動作も比較的軽快だ. デフォルトでインストールされるエディタ,ファイラー,ブラウザなどのユーティリティも Windowsと操作性が似ており使いやすい.

ただし,一つ大きな問題が起こった. ユーザーアカウントを管理するツールK User Managerが使えない. 新規ユーザーを登録しようとしてこのツールを立ち上げると, "Error opening /etc/yppasswd for reading " というメッセージが表示される. その後,K User Managerは立ち上がるが,既存のユーザーおよびグループは何も表示されていない. そのままユーザー登録しても設定情報を保存するときに失敗する.

ユーザーがrootのみで使い続けるわけにはいかないので,ネットで解決策を検索すると, SuSEのナリッジベースにThe KDE 2.0 user manager doesn't workという 情報が見つかった. SuSE 7.1とKDE2の組み合わせでK User Managerが動作しない,というもので,まさに今の状況である. 解決策は "Please use YaST1 to manage your users. " となっていた.

YaST1というのは,SuSEに付属してくるコンソールベースのコンフィグレータである. YaST1にもユーザーアカウント管理の機能があるので,そちらを使って下さい,ということであるが, このときはYaST1が何であるかわからなかった. SuSE 7.1とKDE2の組み合わせで起こる不具合なら,SuSEの方をアップグレードすればよいと考え, 7.2にアップグレードしたところK User Managerが正常に動くようになった. このときもやはりネットワーク経由で行った.


アクセス制限とサービスの管理

inetd関連の設定はRedHatと同じだった. ここに書いたように, hosts.allowとhosts.denyを適当に設定すれば,セグメント外からのアクセスを拒否することができた.

次に行ったのは不要なサービスを停止させることである. おまかせインストールを選んだので,よくわからないサービスがたくさん動いている. このマシンは直接インターネットに繋がっているので, 少なくともsendmailとsambaは絶対に止めなければならない.

RedHatなら使いやすいntsysvがあるが,これはRedHat独自のライブラリを 使っているので他のディストリビューションでは使えない. ならばと,chkconfigやXベースのtksysvをインストールしようとしたが, ファイルが重複しているとのメッセージが出てインストールできない. どうやらRedHat系とはサービスのランレベル管理ツールが共通ではないらしい.

KDEにもksysvというtksysvにそっくりなツールが付属しているが, これがなぜか使えない. rootでログインしているのに,ksysvを起動すると「あなたはrootではないので閲覧だけできます」という 旨のメッセージが表示され,サービスを停止させることができない.

この問題に関しては未だ解決できておらず,差し当たっては 最も簡単な手段であるsendmailとsambaのアンインストールで逃げている状況である.


Intelのフリーコンパイラ

今回SuSEをインストールしたのは,実はもう一つ理由があって, ここからダウンロードできる intelのフリーFortanコンパイラを使ってみたかったからである. SuSEのインストールが一段落したので,早速RedHat7.1向けバイナリをダウンロードして インストールしてみた.

が,インストールの途中で「アーキテクチャが違います」というメッセージが出て 終了する. 事前に集めた情報では,Athlonでは問題なく動くということだったので,Cyrixでもと期待していたのだが...

SuSEの設定もイマイチ理解できてない状況であるが,ネットワークインストールに成功した だけで良しとしよう. 今回は日本語ドキュメントのありがたさを痛感した.


お問い合わせはメールにて: akasaka@klc.ac.jp

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