980円のSlot1マザー

March 16, 2001


3月某日,アプライドの中古パーツセンターに行ったところ, ジャンクマザーが裸のまま箱に入れられて大量に売られていた. ほとんどはSocket7のATマザーで,430TXが載っている. 基板上のシルク印刷を見ると2.2Vの設定がある.K6が使えるうえ,値段は何と100円! 5,6枚買って帰ろうと思って綺麗なやつを選んでいると,どのマザーも電池とBIOS ROMがハイエナされていた. 電池は何とかなるが,ROMが無いのではちょっと使い物にならない(型番がわからないのでBIOSを焼こうにも焼けない).

他のはないかと探してみると,Slot1マザーが2枚見つかった. こちらはROMも電池も載っている. 見たところ基盤上の損傷もない. 値段は980円で,両方とも買って帰った.

一枚は440LXが載っており,シルク印刷されている型番からECSのP6LX-Aだとわかった. もう一枚は440BXが載っているが,型番らしきものは印刷されていない. BIOSはPhenixが載っており,Ensonicのサウンドチップがオンボードである. もしかするとGatewayのマザーではないかと考え,基盤ののすみに書かれた "4000264" という 数字を頼りにGatewayのサイトを調べてみると,やはりそうであった. IntelからのOEM供給品であり, MP440BXという型番らしい.

その後の顛末

P6LX-A
MP440BX


P6LX-A

メーカーのサイトで調べてみると,最新BIOSではCeleronにも対応している. オンボードSCSIのモデルもあるらしく,このマザーにもSCSIコントローラやコネクタのパターンがある. 手持ちのSlot1のCPUはCeleron 333MHzしかないので,とりあえずこれを使って動かしてみる.

CPU,64MB SDRAM,PCIの初代ミレを差してスイッチを入れると,幸先よくエナジースターが現われた. が,"MMX Pentium II 250MHz" と表示されたところでメモリチェックに進まず止まってしまう. BIOSメニューに入ろうにも,キーボードが反応しない. メモリやビデオカードを差す位置をいろいろ変えて試してみたが,状況は変わらない.

ここで次の二つの原因を考えた.

  1. BIOSがCeleronに対応していない.
  2. BIOSのアップグレードに失敗して起動不能になった.
1の場合は,マザーが対応しているCPU,つまりKlamathコアのPentiumII 233〜333MHzあたりを使えば起動できる. このあたりのCPUはもう新品では売られていないのでオークションで手に入れることになるが, ジャンクマザーが生きているかどうかを確かめるためにわざわざCPUを買うのは 本末転倒 だし,オークションでのPentium IIの相場は結構高い.

2の場合は,同じ型番のマザーかROMライターがなければ復活させることは難しいが(ROMの容量が同じなら他のマザーでも 書き換えはできるらしい),某所にてBIOS ROMの書き換えサービスを郵送料のみでやってくれる ということを知り,ここに頼んでみることにした.

このマザーに載っているBIOS ROMはSSTの32pin DIP(いわゆるゲジゲジ型)である. 手で抜いたので足を豪快に曲げてしまったが,慎重に元に戻した. 先方にBIOSの書き換えを依頼すると快諾して頂いた. 郵送要領を読んでみると,

「ライセンスシールは必ず貼ったままでお送り下さい」

と書かれている. ROMの型番を調べるときに "AWARD" のシールを剥がさなければならないのだが, 送るときはこれを必ずROMと一緒に送って下さいというのである. 最初は理由がよくわからなかったが, どうも(マザーに載っていたのではない)別のROMにBIOSを焼くことは ライセンス違反になるらしい. マザーを買うということはBIOSのライセンスを買うことにもなり, 別のROMにBIOSを焼くことはソフトウエアの複製にあたるということだろう. ライセンスシールを一緒に送ることで,マザーの正規ユーザーであることを証明することができるのだ. 一つ勉強になった.

ROMをカセットテープの箱に入れて送ると,数日後に最新BIOSが書き込まれて戻ってきた. Celeron 333MHzを差して起動すると,正常に認識されBIOSが立ち上がった. 先方にお礼のメールを書くと「Celeronが使えるならLXもまだまだ健在ですね.長く使ってやって下さい」 という返事が来た.


MP440BX

こちらは440BXが載っているのだから,Celeron未対応ということはないだろうと思ったが, スイッチを入れても画面には何も現われない. 一応ファンは回っている. 例によってビデオカードやメモリを差す位置を変えてみたが,状況は変わらない. 完全ジャンクのはずれを掴んでしまったかもしれない.

このマザーのBIOS ROMは直付けになっており,P6LX-Aのような手は使えない. もしBIOSが死んでいるなら復活させるのはほぼ絶望的である. 現在の状況からしてその可能性は高いが, 何と言っても440BXだし,基板上の損傷は無いし,何とかして復活させたい. 念のため,Intelのサイトからマニュアルをダウンロードして読んでみた. すると,

マニュアルのどこにも "Celeron" の文字が見当たらない

のである(全文を検索して確かめたので間違いない). 当然Celeronには対応しているだろうと思っていたが,どうやらこのマザー, PentiumIIにしか対応していないようである. また,このマザーは基板上のジャンパでFSBや電圧を変更することはできず, FSBは66MHzと100MHzのみで,CPUに合わせて自動認識するらしい. さすがはIntel純正のマザーである. 規定外の設定は一切できないようになっている.

さらに,このマザーには起動にNormal,ConfigureおよびRecoveryモードという三つのモードがあり, ジャンパで切り替えるようになっている. マニュアルやサイトから得た情報をまとめると,各モードの意味は次のようになる.

試しにCeleron 333MHzを差してRecoveryモードで起動してみた. するとオンボードのブザーからピッという音が...

初めてこのマザーが反応した.完全死ではなさそうである. 早速,最新BIOSを入れたFDDを繋いでみた. やはりブザーは鳴ったが,その後FDDを読んでいる気配がない. いくらRecoveryモードとはいえ,CPUが対応していなければBIOSの更新は無理らしい.

NIFTYのGateway会議室で状況を説明し,解決策を尋ねると,同じマザーをCeleron 300Aを使って RecoveryモードでBIOSを書き換えた人がいた. その人曰く

「ブザーが鳴ったのならBIOSは生きていますね.」

実にありがたいお言葉である. 333MHzじゃなくて300MHzならできるのかと思い,最近まで自宅マシンで 使っていたCeleron 300A+ドーターカードを差して試してみた. が,結果は×.今度はブザーすら鳴らなかった.

残された手段はただ一つ. Pentium IIを手に入れて試してみることである. 幸い(?),NIFTYの掲示板でPenII 350MHzを送料込3500円で売りに出している人がいたので, 早速メールを出して購入した. ただし,もし本当にBIOSが飛んでいたら,いくらPenIIでも復活はできない.

数日後CPUが届いた. マザーにCPU,メモリおよびビデオカードを差してConfigureモードで起動してみた. しばらく間があったが,CRTのLEDが赤から青に変わった. 画面には "Gateway 2000" の文字が...

復活!!

Phenix BIOSとの感動的な対面だった.CPUクロックは200MHzと表示されている. BIOSメニューで350MHzを選択し,"Load Setup Default" を実行して一旦電源を落とす. Normalモードにして再度起動すると,正常に350MHzと認識した. 起動ディスクを入れたFDDからの起動も問題なし.

ここから最新BIOSをダウンロードした. アーカイブにはBIOS更新用ディスク作成ユーティリティが含まれているので, これを実行し更新用ディスクを作成する. このディスクから起動すると自動的にBIOSが更新された. 新しいBIOSでは,起動時にGatewayの新ロゴが表示されるようになった. HDDを繋いでみたが,正常に認識されFDISKやFORMATも問題なかった.

結局,980円で買った2枚のマザーは両方とも復活した. しかしよ〜く考えてみると,単にCeleronに対応していなかっただけで, 最初からKlamathコアのPentiumIIで試していれば両方とも動いたかもしれない. 近ごろはSlot1系のマザーが叩き売りされているようなので, どんなSlot1マザーでも必ずサポートしているKlamathのPenIIは一つ持っておくべきだろう. 今回,Deschutesコアの350MHzを買ってしまったことが少し後悔ではある.


お問い合わせはメールにて: akasaka@klc.ac.jp

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