CyrixIIIを使ってみる

Oct. 4, 2001


CPUの入手

このところL2キャッシュレスのCPUにハマっている. Celeron266MHzのことはここに書いたが, 今度はじゃんぱらの 通信販売でVIA CyrixIII 533MHzを 注文してみた.1980円だった(安い!). 送料が一個口で1000円ということだったので,ついでにもう一つCeleron266MHz(780円)も注文した.

私は互換CPU派である. 最初に自作したときに使ったCPUはAMDの5x86-P75であった. CyrixのCPUもいくつか使ってきた. 486の時代には5x86-GP100GP120を使いWindowsNT 3.5を動かしていた. Socket7の時代には6x86-GP200MII-300GPを使った. 雑誌の付録だったWin2k RC2は,MI-300GPで動かした. IntelのCPUと同等の性能のCPUをより安価で供給するというのがCyrixの持ち味であったが, PentiumIIの時代に移ってからのCyrixは, 同じく互換CPUの雄であるAMDがK6シリーズでIntelが脅かすまでに勢力を伸ばしたのと対照的に, 業績不振からCPU市場からの撤退を余儀なくされた. その後,チップセットメーカーのVIAに買収されて現在に至っている.

余談だが,私の研究室には最近初めて自作に挑戦した人が2名いる. 以前,ある雑誌で自作初心者向けの特集をやっており, 「初めて自作するときはIntelのチップセットを 使ったマザーにIntelのCPUを組み合わせるのが良い」という意味のことが書かれていた. その記事を読んでいた彼らに, 互換CPU派の私は敢えてSocketAマザー+Duronの組み合わせを勧めた. 現時点ではこの組み合わせが,一番コストパフォーマンスが高くトラブルも少ないと思ったからである. 発売当初は流通量が少なかったSocketAマザーも,ここに来て各社から発売されており, 価格もこなれ相性問題もほぼ無くなっている. 一方,i815系のチップセットとPentiumIIIには一部動かない組み合わせがあると聞いている. また,最近のSocket370マザーにはPPGAのCeleronをサポートしていないものもあるらしい.

なお,先の雑誌の特集には,「自作に詳しい人が身近にいる場合はSocketAマザーにAthlon/Duronの組み合わせも面白い」という 意味のことが

欄外のコラム

に書かれていた.

CyrixIIIはSocket370互換のCPUであり,Cyrixを買収したVIAがCyrixブランドで 発表した最初のCPUである. あちこちのサイトやNIFTYの会議室で調べた限りでは その互換性はかなり高く,Celeronが動作すればBIOSが正式対応していなくてもだいたい動作するようだ. BIOSが対応していない場合は "Celeron XXX MHz" のように表示されるらしい.

VIAのサイトには動作確認マザーのリストがある. これを見ると,i810やApollo Pro 133以降のチップセットが使われているマザーならまず問題ないようだ. 有志が作ったと思われる 動作確認マザーのリストもあり, こちらには440BXやZXのマザーもいくつか含まれている. 手持ちのAbit BH6もリストに含まれており, 買ってはみたものの動かすマザーがなかった,という最悪の事態は免れそうである.


ジャンク市で対応マザーをGet!

じゃんぱらでCyrixIIIを注文した次の日,アプライドのジャンク市で Slot1のマザーを2枚手に入れた. どちらも動作不良品のシールが貼られており,価格は980円であった. アプライドで買ったジャンクマザーとは,

980円のSocket370マザー
980円のSlot1マザー

に書いたように,3戦3勝0敗と非常に相性が良い.

今回手に入れたマザーであるが,1枚はAOpenAX63Proである. VIA Apollo Pro 133が載っており,133MHzのFSBやATA66に対応している. Slot1系のマザーで非Intelのチップセットを載せたものを買うのは初めてである(実は持ち帰ってメーカーサイトでスペックを 確認するまで440BXマザーと思っていた). もう1枚はFICVB-601で,こちらはごく普通のBXマザーである.

持ち帰って早速動作確認してみると,両方とも正常にBIOSが起動した. その後,AOpenのサイトで調べてみると,AX63ProはCyrixIIIに正式対応していることがわかった(BIOSのリビジョンが 古い場合はアップデートが必要). 思わぬところで正式対応マザーを入手することができたわけである. ただし,完全に動けば,の話であるが.


動作確認

数日後,CyrixIIIが届いたのでAX63Proに載せて動かしてみる. 動作確認チェックのときにBIOSのリビジョンを確認していなかったので,最新BIOSが入った フロッピィを用意した. もし,BIOSのリビジョンが古ければアップデートする覚悟はできている.

まず最初に,一緒に注文したCeleron266MHzを動かしてみた. 問題なく動いた. BIOSのリビジョンを確認してみるとR1.25で,CyrixIIIに対応しているリビジョン(R1.21)より新しい. アップデートの必要はないようだ. 少しほっとした. なるべくならBIOSのアップデートはやりたくない.

ドーターカードはAsusS370を使う. マザーがCyrixIIIに対応しているようなので,ドーターカードの電圧設定はDefaultに設定した. このドーターカードは,いつかじゃんぱらに200円で出ていたので買っておいたものだ. リテンションへの収まりはあまり良くないが,テストだから気にしない. このところSlot1マザーが増殖しているのでドーターカードは見つけたら買うことにしている.

CPUクーラーを取り付けてマザーに組み込む. 電源を投入すると,

VIA Cyrix III 350MHz

と表示されBIOSが立ち上がった. 周波数表示が変であるが,まずは成功である.

533MHzは133MHzの4倍のはずだが... と思いながら,BIOSメニューに入ってCPUのクロックを設定してみると, このCPUは

倍率可変

であることがわかった. 昔は,40*4の5x86-P75を50*3で動かしたり,66*4.5のK6-300(K6-2ではない!)を100*3で動かしたり したものだが, PentiumII以降で倍率可変のCPUに出会ったのは初めてである. FSBを100MHzに,倍率を5倍に設定するとちゃんと500MHzで起動した. 本来ならば133MHzの4倍に設定するところだが,テストに使ったSDRAMがPC100だったので,ここまででやめておいた.


Win98SEのインストール

翌日,fukunm1のMEZ-VM+Celeron 333@500MHzを このAX63Pro+CyrixIII 533MHzにリプレースすることにした. このマシンはWindows Meがインストールされており,私の研究室のスキャニング専用マシンとして使われている. マシンの詳細はここに書いた. MEZ-VMではCMDのATA66カードを使っていたが,AX63Proでは必要ない. また,ビデオカードはMilleniumII AGPを使うことにした. SDRAMはPC133なので,今回は133*4の設定にすることができる.

ドーターカードはSoltekSL-02Aを使ってみた. こちらはテストの時に使ったS370と違ってリテンションにぴったり収まり,具合が良い. マザー,CPU,ビデオカードを組み込んで,とりあえずこのまま起動してみた. が,なぜか画面には何も表示されない. 変だなと思いながらドーターカードをS370にしてみると起動した. ドーターカードとマザーの相性だろうか. 収まりは悪いがS370をそのまま使うことにする.

インストールされていたWinMeが起動し,順調にドライバが更新されているように見えたが途中でフリーズ. 何度か再起動してみたが状況は変わらない. やはりOSを再インストールするしかなさそうだ.

ブートドライブをフォーマットし,Win98SEをインストールする(NIC,SCSIは外しておく). ファイルのコピーは問題なく終了したが,再起動後固まってしまう. メーカーが提供するチップセットドライバをインストールしないと安定しないのは サードパーティ製のチップセットだとよくあるケースで, 今回も予めVIAのサイトから最新の4in1をダウンロードしていたが, OSのインストール自体が完了していないため,4in1を組み込むことができない.

どうやらBIOS設定で "Load Turbo Default" を選択していたのが原因らしい. "Load Setup Defalut" を選択し,念のためオンボードIDEのDMAを無効にしたところ, 再起動に成功し,インストールプロセスが再開された.

インストールが完了したので4in1を組み込む. 組み込み後はBIOSでDMAを有効にしても問題なく起動できた. ただ,"Turbo"に設定するとやっぱり起動に失敗する. 個々の設定項目を調整すれば起動できるのかもしれないが,私は速さより安定性を重視するので, "Setup Defalut"で使うことにする.

次にNIC(Planex FNW-9700T)を取り付け,ドライバをインストールする. このNICのコントローラはVIAのVT86C100A(Rhineチップ)である. 先日,同じVT86C100Aを 載せたナカガワメタルTR-PCI-100goreへの組み込もうとしてうまくいかなかったが, 今回はすんなりとドライバの組み込みが完了し,pingが通るようになった.


ベンチマーク

一応Win98SEのインストールが終わったので(SCSIとスキャナの組み込みはWinMeにアップデートしてから行う), ベンチマークを取ってみた. 以下はHDBenchの結果である.

 ★ ★ ★  HDBENCH Ver 3.30  (C)EP82改/かず ★ ★ ★ 
M/B Name      
Processor   CyrixIII 533.09MHz[CentaurHauls family 6 model 6 step 0]  
VideoCard   Matrox Millennium II AGP  
Resolution  1024x768 (24Bit color)  
Memory      129,948 KByte  
OS          Windows 98 4.10 (Build: 2222)  A   
Date        2001/10/03  12:47  

HDC = VIA Bus Master PCI IDE Controller
HDC = Primary IDE controller (dual fifo)
HDC = Secondary IDE controller (dual fifo)

A = GENERIC NEC  FLOPPY DISK    
CD = GENERIC IDE  DISK TYPE47    
E = GENERIC IDE  DISK TYPE47    
F = MITSUMI CD-ROM FX800S !B Rev R02 

   ALL  Integer   Float  MemoryR MemoryW MemoryRW  DirectDraw
 13986    18668    9042     8700    6441    10428           3

Rectangle   Text Ellipse  BitBlt    Read   Write    Copy  Drive
    14389  12543    1014      13   28917   24432    5396  C:\100MB

トータルの結果はCeleron 266MHzよりも悪い. 構成が全く違うので単純な比較できないが, 整数演算ではCeleron266MHzを上回っているものの, 浮動小数点演算がかなり劣っており,Cyrixの伝統が守られている. 試しに,自作の浮動小数点ベンチマークを実行したところ, 何と18.9秒もかかってしまった. 歴代ワーストである. これでは雑誌等で酷評されるのも無理はない.

ただし,私自身はベンチマークの結果をほとんど信用しない. ベンチマークの結果と実際の使用感とは必ずしも一致しないからである. 確かに,ベンチマークの結果は発売時期が2年以上前のCeleron266MHzに負けているが, 使った感じではCeleronよりもむしろ動作はきびきびしている. それともう一つ.CyrixIIIには

ベンチマークには現われないすばらしい長所

がある. この件に関しては後述のCPUの温度を参照して欲しい.


WinMeのインストール

Win98SEのインストールが完全に終わったので次はMeにアップデートする. CD-ROMドライブにCD-ROMを入れると自動的にアップデートプロセスが始まる. しかしながら,ファイルのコピーが始まると,数%くらい進んだあたりでCD-ROMドライブのアクセスランプが 点きっぱなしになり,コピーが進まなくなる. そのまま放っておくと読み込みエラーでインストールが中断する.

BIOSでオンボードIDEのDMAを無効にし,PIO Mode3に固定してリトライしたが結果は同じ. CPUのクロックを落としてみたがやはり同じ. Win98SE上でCD-ROMの内容を一旦HDDにコピーしてからインストールしてみようとしたが, これもコピーの途中で読み込みエラーが発生し,コピーが中断してしまう. CD-ROMドライブは先日まで使っていたし,Win98SEのインストールは問題なかったわけであるから, どうもVIAのIDEバスマスタドライバが悪さをしているようだ (試しに,CD-ROMドライブのプロパティでDMAのチェックを外してもダメだった).

何度も失敗して面倒くさくなってきたのと,どうせこのマシンにはスキャナーを繋ぐためにSCSIカードを差すので, 遊んでいた東芝製のSCSI 12Xドライブに交換することにした. SCSIカードは今まで使っていたI/O DATA SC-UPCIをそのまま使う. カードを差してCD-ROMドライブを繋ぎ,起動すると "Symbios 53C875 PCI SCSI Adapter" として自動認識され Win98SEのCD-ROMを要求された. が,CD-ROMドライブは今交換したばかりで,SCSIドライバの組み込みが完了するまでこのCD-ROMドライブは使えない. 仕方がないのでドライバの組み込みウィザードをスキップし,I/OのサイトからSC-UPCIのドライバを ダウンロードして組み込んだ.

SCSIのCD-ROMドライブからHDDにMeのCD-ROMのWin9Xフォルダをコピーした. 今度は問題なくコピーが終了. Meへのアップデートも無事終了した.


CPUの温度

スキャナ(EPSON GT-7000)を接続してドライバを組み込み, 正常にスキャンができることを確認してすべてのインストールが完了した. しばらく使ってみたが何ら問題ない. 動作不良品として売られていたマザーは結局何の問題もなく動いている

CyrixIIIは発熱が少ないと聞いていたので(それが唯一のウリであるような風に書いてある記事もあった), AOpenのサイトからハードウエアモニターをダウンロードし,CPUの温度を見てみた.

このマシンが置いてある部屋はいわゆるコンピュータルームであり,一年中20℃程度の室温に保たれている. それにしてもCPU温度が22℃というのは凄い. ほとんど室温と同じである. しばらくハードウエアモニターを眺めていたが,20℃から24℃の間を変化するだけであった. 試してはいないが,コンピュータルームでの使用に限定するならファンレスでも行けるのではないだろうか.

CPU(に限らず半導体部品)は機械的な運動部分がないため, 消費電力はすべて熱として放出される. 発熱が少ないということはそれだけ消費電力が少ないということである. 巷で持てはやされているオーバー1GHzのCPUは60Wもの電力を消費するが, ワープロで文書を書いたりEメールを読み書きしたりするだけの作業に これだけの電力を消費するのは, 省エネルギーや地球温暖化防止の観点から見ると,どう考えてもムダである. CPUのクロックが倍になっても,仕事の能率が倍になるわけではないのだから (このあたりのことは今日の必ずトクする一言で 力説されており,深い感銘を覚えた). 倍率可変でいろいろ遊べるうえ,発熱の少ないCyrixIIIは

自作マニアの知的好奇心を満足させつつ,環境保全にも配慮したCPU

ということになるのである.


お問い合わせはメールにて: akasaka@klc.ac.jp

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